タメ息を袋に集める

迷子の自動販売機

深夜、仕事用の携帯に電話が入る。
社長の豪邸に珍しく呼ばれたと思ったら、
庭先を自動販売機が駆け回っていた。

営業部の5人は網を、
経理部長は投げ縄を持って
自動販売機を追い回していたが、
彼らの愚鈍な動きでは、
いつまで経っても捕らえられるものではない。

煙草ですか?
ジュースですか?
近所の住人が面白半分で見物に来る。
ホームビデオも何台か見つめている。

専務が猟銃を持って現れたが、
社長夫人が無益な殺生を禁じて、
専務は輝かせた瞳を曇らせて帰って行った。

自動販売機は追われる度に興奮を高め、
池の近くの石灯籠を倒しながら走り回った。

コスプレ好きの女子社員がやってきて、
暴れ狂う自動販売機に向かって
歌を歌った。
自動販売機は立ち止まり、
ゆっくりと女子社員に近づいたが、
経理部長が功を焦って投げ縄を投げた事で、
自動販売機は再び暴れ出した。

網も投げ縄も、歌声もむなしく、
自動販売機は庭先を荒らすだけ荒らして、
塀を乗り越え、
裏山の方へと走っていく。

我々は自動販売機を追い掛けたが、
人間の足では追いつく術もない。
暗闇へ消えていく瞬間、
自動販売機は最後に一度だけ振り返り、
売り切れの赤いランプを涙のように光らせていた。

我々は、もう二度と、
あのような自動販売機を生み出してはいけないのだ。
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by maekawaz | 2004-02-16 18:53 | 詩集
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