タメ息を袋に集める

追放されたカラス

洗面器に水を張ってから
キャップ一杯の漂白剤を入れる。
最近はいい漂白剤が出来てるので、
ガンコな黒さも落ちるだろう。

仲間の一羽を捕まえて洗面器に押し込む。
暴れる仲間を取り押さえ続けること一時間、
油断した隙に仲間は飛び立つ。

「お前なんか仲間じゃない!」
仲間はそう叫びながら飛び立っていく。
灰色の、なんだか分からない鳥になっている。

一時間では真っ白にならないな、
俺は洗面器の水を取り替えて、
漂白剤の量も二倍に増やす。

灰色になった鳥が戻ってくる。
黒い、黒い、黒い仲間を引き連れて、
黒い、やぼったいカラスの一群が、
組合よろしく俺に抗議する。

鳥に取り囲まれて俺は不愉快、
そういうお前達のセンスが嫌いだ。
同じ色に染まりきって
徒党を組んでいる。

最初は仲間を漂白した事について、
やがて、俺への日頃の不満を
ギャーギャー叫び始める。

自治会費を払わないこと、
年賀状を出さないこと、
夜中に飛び回ること、
すべてが迷惑だと言う。

俺は奴らのhystericな叫びを無視して
洗面器に飛び込む。
漂白剤入りの洗面器。
飛び散ったシブキを嫌って
取り囲む輪が大きくなる。

「お前達が黒くたって構わない!
 俺だって黒くたって構わない!
 そんな事は本当はどうだっていいんだ!
 けれどお前達には俺の苛立ちがわかないだろう!」

俺は洗面器の中でドカリとあぐらを組んで腕組んで、
一群を睨み付けながら言う。
一同、呆気にとられて俺を見ている。

一群を掻き分けて、黒い母親が黒い涙を流しながら俺の前へ来る。
ところどころ羽が抜け落ちてボロボロになっている。
「もうやめて! ヤメテちょうだい!」

泣き崩れる母親に俺はやさしく、
「あんたも所詮はその色に染まっていたいんだろ、」
「黒い姿の何がいけないの!」
「だから! 色なんて本当は関係ないって言ってるだろう!
 でもこうでもしないと、お前達は分かってくれないじゃないか!」

分かってる、こんな事したってお前達は結局分からない。
それが証拠に一群は俺を諦めて去っていく。
黒い母親が泣きながら俺に永久の別れを告げる。

一人になって、俺は泣いた。
笑いながら、俺は泣いた。
黒い涙を流して泣いた。
けれど俺は後悔はしない。
漂白剤が翼に染みる。
ヒリヒリとした痛み。
体の中までヒリヒリとした痛み。

2時間経っても、3時間経っても、
俺は真っ白にならなかった。
やっぱり灰色のなんだか分からない鳥になった。

翼は、それでも俺を空へと連れて行く。
黒い涙が止まらない。
泣いて泣いて、この身が真っ黒に染まったら、
俺はもう一度、
あの一群の中に帰っていくだろう。
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by maekawaz | 2004-02-19 19:37 | 詩集
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