タメ息を袋に集める

幸福のタネ

男は幸福のタネを拾ったので
育ててみることにした。
さっそく庭に蒔いて水をやる。
すると幸福のタネが土の中から男に言う。

一日でも水やりを忘れたら、
俺は芽を出さないぞ。

忘れるわけがない。
なにしろここから幸福が育つんだから。
すると幸福のタネが土の中から男に言う。

俺が大きくなって甘い実がなったら、
何人に分けてやるんだ?

まだ芽も出てないのに、
そんな事聞いてどうするんだ?

オマエが分けてやりたいと思った数だけ、
俺は実をつけるからさ、
オマエが独り占めするなら、
実はひとつだ。
それも甘いかどうかは保証しないけどな。

世界中の人間に分けてやりたいと言ったら、
どうするんだ?

それだけの実をつけるさ。
オマエが心からそう願えば。

時が過ぎ、

男が水やりを忘れたのは、
それから何年も経ってからだった。
ずっと芽が出なかったんだ。
忘れるときだってあるだろう。

男は泣きながら水をやり、
もう二度と忘れないと誓った。
幸福のタネは何も語らなかった。

長い年月が過ぎ、
男の人生も終わりに差し掛かった頃、

幸福のタネは、
静かに、

美しい芽を出した。

男は心から幸福を感じた。
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by maekawaz | 2004-05-10 23:47 | 詩集
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