脱皮男を追いかけて
奴が密かに脱皮を繰り返している事を、
俺だけは知っている。 去年のこの時期に、 裏山で奴そっくりの抜け殻を見つけた事がある。 思わず声を掛けてから、 それが抜け殻だと気付き、 腰を抜かして帰るのに苦労した。 そして例の脱皮男を観察する。 ひとまわり大きくなってはいないか? どこか成長したところはないか? けれど男は何の変わり映えもしない。 以前と変わらず、 明るく陽気に暮らしている。 そして今年の脱皮の時期、 俺は男の跡をつけ、 脱皮の現場を押さえることに成功した。 男はひどく狼狽し、 お願いだから内密に、 と抜け殻を慌てて折りたたみながら言う。 誰にも言わない代わりに、 俺は聞いてみる。 どうして脱皮を繰り返すのか? アンタにだってあるだろう、 脱ぎ捨てないと前に進めないことが、 男よりも先に、 脱ぎ捨てられ、折りたたまれた殻の方が答える。 乾ききった涙を流して。
by maekawaz
| 2004-05-11 12:42
| 詩集
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