王様の条件
旅人は言った。
太陽の王は、夜には手が届かないし、 夜の王とて月を自由には出来ないのです。 月の女王もまた、見えない闇があり、 風の王にも征けない場所があります。 私は長い旅の途中で、多くの王を見てきましたが、 己の限界を嘆くのはいつも、 人間の王と決まっておりました。 人間の王だけが他の王と自分を見比べるのです。 己の世界を持ち、その世界を愛する者を王と呼ぶならば、 誰しもが王であり、 その国境を嘆く必要など不要なのではないでしょうか? 良き王とは国境に兵を置かず、 私のような旅人を迎え入れ、 このように世界を語り、 己の世界を豊かにする者の事です。 私がこれまで出会った、自然界の偉大なる王のすべてがそうでした。 そして私は今日、こうしてまた、 一人の偉大なる王とお話しをしているのです。 人間の王は応えた。 それならばお前はさしずめ、旅人の王かもしれぬな。 私の国で、ゆっくり休まれるがよい。 私もまた、今夜はゆっくりと眠れるであろう。
by maekawaz
| 2004-05-16 14:09
| 詩集
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