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タメ息を袋に集める

カテゴリ:詩集( 455 )

猫が駆け抜ける

車と車の流れの間を、
脚を十本ぐらいにして猫が駆け抜ける。
道の向こうには
待っている家族が居るかもしれない。
小さなお気に入りの場所が或るのかもしれない。
カナラズも、エイエンも、分からないまま、
君は駆け抜けた。
アスファルトとタイヤに囲まれた場所で
君は生まれて、小さな世界を知って、
小さな時間を生きる。

刹那と刹那の流れの間を、
小さな永遠を抱えて猫が駆け抜ける。
僕は君達が刹那を避けきれずに
アスファルトに永遠を零してしまうのを何度も見た。
この世界が君達に強いている事を、
僕は取り除く事もできず、
明日も明後日も、
君達が無事に道の向こう側に辿り着く事を、
祈るばかりだ。

車と車の流れの間を、
地上20センチの視線で捉えて猫が駆け抜ける。
鉄とコンクリートの中では、
小さな命はもっと小さく見えて、
けれどその分、温度や光は凝縮されて、
そんなふうに生きるべきなのは、
みんな同じだけれど、
僕は祈るばかりだ。

今日も永遠が続きますように。
by maekawaz | 2012-02-19 11:13 | 詩集

駅までの道のりの途中で

駅前に住んでいた頃は
息を止めたままでも駅まで辿り着いたし、
新幹線だってSLだってすぐに飛び乗って、
宇宙の果てにでも行けたけれど、
引っ越してからは、
一日や二日歩いたぐらいでは
駅には辿り着かないし、
飛び乗るべき一輪車も二輪車も
錆付いてイライラするんだ。
あの頃見た宇宙の果てだって、
なんだかマボロシのような気がするんだ。
でもね、
うちにテレビがあるんだけれど、
うちのテレビはちょっと嘘つきなんだけど、
宇宙の果ては拡がっているって、
テレビが言っていたから、
本当かどうか分からないけど、
俺はナルホドナって思ったね。
道理で昔ほど簡単に辿り着かないんだナ、

遠い遠い駅までの道のりの途中で
追い越して行く車輪の錆の音も軽やかに、
それでも僕は歩いている。
by maekawaz | 2012-02-05 00:32 | 詩集

手紙をビンに詰めたから

この川はドウヤラ、
海まで行くらしいから、
手紙をビンに詰めたから、
もうすぐ届くと思います。

もしもアナタの受け取る場所が
川の上流だったらすみません。
ちょっと時間が掛かるかも。

けれど僕は確実に、
手紙をビンに詰めたから、
いつかは届くと思います。

ビンの中身の手紙はすべて、
アナタに届くと信じてる
祈りの言葉ばかりだから
by maekawaz | 2012-01-22 12:00 | 詩集

やっと眠れる

やっと眠れる
持って帰った外の空気を全部吐き出したら
畳にシガミついて
ちょっと泣く真似なんかしてから
目を閉じたら
猫が鳴くから起き上がってネコ缶を開ける。

やっと眠れる
ドライヤーを止めてから
湯上りの温度をイソイソと
ベッドに運んでから目を閉じたら
猫が鳴くから起き上がって
ひとしきりネコジャラシを振り回した。

やっと眠れる
朝からずっと頭の中にある
うたのフレーズをウヤムヤにして
マクラを抱いて夢の中へ走り込み、
急いで目を閉じたら、
猫が歌うから
朝から気にしていた歌を猫が歌うから、
僕は起き上がり
吐き出すようにうたを書き始めた。



そんな夢を見た次の朝、
僕はもうそのメロディを忘れて
新しいうたを探している。
by maekawaz | 2012-01-21 13:08 | 詩集

ほっこり

ほっこり
を飼い育ててみようと思い立ってから
さまざま準備いたしました。
暑くないように扇風機と、
寒くないようにコタツも並べてました。
ほっこり
は寂しがり屋らしいので、
ネコにお願いしたら
友達になってくれると
約束も取り付けました。
ほっこり
に何を食べさせようか散々考えた挙句、
ホットココアを用意しました。
ほっこり
の寿命は様々で、長生きしたり、
短命だったり、復活したりするそうです。
どんな時でも僕たちは
ほっこり
を愛し、慈しみ、共に歩む覚悟をしました。
あとは、
ほっこり
がやって来るのを待つだけなのです。
by maekawaz | 2012-01-14 12:51 | 詩集

不機嫌なネコに向かって

不機嫌なネコに向かって
理由を問いただしてって仕方ないから
お天気が変わるのを待っている事だけ
片隅にメモでも残して
ドミノでも並べていよう。
そのうち不機嫌に飽きたネコが
ドミノを倒しにやって来るだろうから。
by maekawaz | 2012-01-09 08:34 | 詩集

マボロシ

君の見ているモノはマボロシだ。
僕の見ているモノもマボロシだ。
音も温度も音楽も、
土も空も海も、
記憶も希望も絶望も、
すべてがマボロシだけれど、
けれどもそれが、
君と僕のそのマボロシが、
繋がっている事に意味がある。
by maekawaz | 2012-01-08 04:58 | 詩集

おはよう

知らない君に
おはようと言っただけで、
君は不愉快になるかもしれない。
僕の知らない事情があって、
複雑に気持ちが動いて、
結局、不愉快に思うかもしれない。

知らない君に
おはようと言ったことが、
君を傷つけたかもしれない。
僕に悪意が無いって分かった上で、
それでも何かを思って、
結局、君は哀しいかもしれない。

知らない君に、
おはようと言った日から、
君が何かを始めるかもしれない。
僕が提案したオハヨウが、
何かの弾みで転がって、
結局、大怪我をするかもしれない。

僕は君を知らないって恐怖と
今日もタタカって、
予測もつかない君の気持ちと
タタカって、
少しでも君を知るために、

もし、
もう一度夜が明けたなら、
おはようと、
言ってみようと思う。
by maekawaz | 2009-09-16 22:00 | 詩集

あしのうら

それでも足の裏が
いちばん頼りになるから、
僕は立ち続けている。
ある日、ハチミツの洪水が来て
壁も床も天井も、
ベッドも椅子も机も、
ベタベタになったなら、
とりあえず立ち続けるしかないだろう。
ハチミツに寄りかかる事は簡単だけど、
紅茶の味を変える事も簡単だけど、
僕はハチミツまみれの手で、
君と手をつなぐコトは失礼だと考えている。
だから、
そうならない為にも、
足の裏を頼りに、
僕は立ち続けている。
by maekawaz | 2009-09-02 21:57 | 詩集

タマネギとラジオの午後

傲慢な言葉で真実を語れば、
それは真実ではないと反発されるでしょう。
だから出来るだけ謙虚な言葉で
真実を語るんです。
私は真実には程遠いのだと、
台所に転がるタマネギに分かる事すら、
私には分からない。
それが真実だと。
そうすれば少しは認められるかもしれない、
お前が及ばぬソレこそが真実だと。
真実は私とアナタの都合により、
存在している。
そうだけれども、
タマネギにはそんな都合には関係がない。
それもまた・・・
茶色い皮を剥きながら、
誰も居ない午後、私はラジオに言った。
by maekawaz | 2009-08-19 23:19 | 詩集